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ザンビア便り第29回「北西部州訪問」

 

 5月13日から16日まで4日間ザンビア北西部州を訪問した。主な目的はルング大統領のアンゴラ国境近くのイケレンゲという村での地雷被害者支援イベントへの参加であった。

 

 北西部州はコンゴ(民)の南からアンゴラ国境まで広がる広大な州だ。私はコンゴ(民)との国境近くにあるソルウェジという街まで飛行機で飛び、まずそこで日本が最近資金援助を実施した視聴覚障害者のための学校建設プロジェクトを視察した。このプロジェクトはキリスト教関係のNGOが実施主体で手狭になった校舎を増築するものだ。建設予定地と学校の授業も見せていただいた。シスターはインド系の方が多く、皆さん子供たちに真剣に、かつ愛情を込めて接している姿が印象的だった。11月には新校舎が完成するので開所式に来たいものだ。

 

学校建設予定地にて記念植樹

子供たちとの交流

 

 ソルウェジから車で4時間、途中道は舗装はされていたが多くの穴が補修されておらず、ランドクルーザーは何度もバウンドしながらアンゴラ国境近くのムイニルンガに向かった。ちなみにルサカからソルウェジまで飛行機だと1時間ちょっとだが、同行の某書記官はドライバーと車で10時間かけて先乗りしてくれていた。この北西部州視察には5カ国ほどの大使も参加していたが、中にはザンビア国内の移動に飛行機を使えない国もあり、15時間かけてルサカからムイニルンガまで車で来た大使もいた。ザンビアは広大な国だ。

 

 ムイニルンガのロッジはこぎれいな建物で川沿いにあった。夕食は各国大使たちと一緒にいろいろな話をしながら意見交換。翌日は7時に警察の先導で各国が車列を組み大統領が訪問するイケレンゲに向かった。乾期に入っており道は乾いた土、砂埃をもうもうとあげ、たまに前方が見えなくなるような状況で、さらにひどい悪路を突っ走った。大統領はルサカからソルウェジまで飛行機、そこからイケレンゲまではヘリで飛んできた。我々外交団は最初の大統領訪問場所のミッションホスピタルで大統領を出迎えた。その後、一緒に病院の視察、北西部州の伝統的指導者たちとの会合にも同席した。鮮やかな伝統的衣装に身を包んだ指導者たちは次々とこの地方の課題について大統領に陳情、大統領は同席していた各省大臣たちに指示し、善処することを約束していた。

伝統的指導者たちとの会合

 

 その後、一行はアンゴラ内戦時代にばらまかれた地雷の被害に遭った村を訪問、そこでも大統領は村人の話を真剣に聞いていた。この日のメインイベントは午後の地雷被害者や地元の有力者を招待しての集会だった。地元は久しぶりの大統領の訪問に感謝するスピーチを、そして大統領は州内に暮らす異なる民族の平和的共存を訴え、政府は北西部州をさらに支援していくと約束した。来年は大統領選挙があり、この州に強い政治的地盤を持たない与党としては選挙対策を始めざるを得ない事情があるのだろう。

地雷被害者への訪問

集会にて演説するルング大統領

 

 北西部州は銅鉱山が多く、ソルウェジ近郊は鉱山会社で雇用を維持している。逆に言えば鉱山以外、農業くらいしか生きていく道はない。しかし、雨水頼りの農業では生産性は上がらず、市場となるルサカは遠く、近隣のコンゴ(民)はこのあたりまだ治安も悪く、そもそも道路がないので輸送もままならない状況だ。開発援助ニーズの宝庫だ。


 私は、翌日ソルウェジに向かい、午後にはソルウェジ近郊のカンサンシにある鉱山を視察した。ここはFQMというカナダ資本の鉱山で広大な採掘場を視察した。ここには日本の日立建機が関連機材を納めており、ルサカから飛んできていただいた田河社長の案内で日立建機の機械、採掘場、精錬工場など見て回った。ここはまさに企業城下町で、鉱山会社は学校、病院、道路など多くのインフラ整備を行っている。なんとゴルフ場まで作ったというからそのビジネスのスケールの大きさに驚く。

日立建機ザンビア田河社長と
(同社車両をバックに)

 

採掘場を見下ろす

 ザンビアはアフリカの中でも有数の銅山があり、ベースメタルである銅の国際的な需要は当分続くといわれており、今後日本企業も銅のビジネスに参画してほしいものだと思う。ちょうどこの日はルング大統領も鉱山を視察しており、ザンビア政府も銅鉱山ビジネスの重要性を認めている。昨年末から騒ぎになっている採掘権料の引き上げ問題も事実上決着をみたが、財政難にあえぐザンビアとしては資源ナショナリズムと外国からの投資誘致の間で、引き続き微妙な舵取りを迫られることとなる。

 今回、きつい日程ではあったが、ルサカにいてはわからない現地の様子がよくわかり、意味のある出張だった。しかし、ザンビアは依然として貧しく、開発ニーズは山ほどある。援助からの脱却を目指すザンビアだが、外国からの投資が簡単に入って来る訳ではない。しかし、ソルウェジの学校で真剣に学ぶ障害者の子供たち、悪路を走っている最中に無邪気に手を振ってくれた子供たちをみていると、日本も微力ながらさらに努力していかねばと改めて感じさせた旅であった。

 

平成27年5月28日
駐ザンビア特命全権大使 小井沼紀芳