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ザンビア便り第27回 「ルアプラというところ」

マンサ空港

ルサカから15.6人乗りの小さなプロペラ機に乗り、約2時間、ルアプラ州の州都マンサ空港に着陸した。空港には飛行機は一機も見えず、人もほとんど見えない。首都ルサカとマンサの間には週2便しか飛んでいない。車で行けば、8時間はかかる。それほど、辺境の地である。
しかし、ルアプラ州は水資源が豊富で、飛行機から見下ろしても、豊かな緑の大地が広がっている。おそらく、JICAの専門家やコンサルの方々が仕事で時々訪れるくらいで、旅行客はあまり行かないところであろう。今回、私がルアプラに出張することを決めたのは、広大な緑の大地、豊富な水資源、コンゴ(民)と国境を挟んで広がるバングウェウル湖といった自然資源を持つルアプラ州の開発の可能性を考えようと思ったからであった。

 

バングウェウル湿地帯

簡易的な灌漑堰

バングウェウル湖畔

 

まず、州政府関係者から話を聞いた。彼らは、豊富な水資源、鉱物資源に恵まれたルアプラ州は、特に農業、魚の養殖、観光業にポテンシャルがあるということであった。メイズやサトウキビの大規模生産、それの加工、さらに湖での魚の養殖は可能性がある。外国資本が入り、農産物や魚の加工工場ができれば地元の雇用創出になり、発展が見込まれる。作ったものをどこで売るのかというと、すぐ隣のコンゴ(民)は大きな市場であるらしい。魚は主にティラピアという鯛のような白身の魚だ。私も夕食に唐揚げにした大ぶりのティラピアを食べたが、とても美味だ。この地方では、昔から漁業が盛んだが、皆零細漁民で、乱獲も進んで、漁業資源の枯渇の危機にも瀕しているらしい。街のスーパーでは冷凍のティラピアが売っていたが、これはなんと中国産だった。何でもかんでも輸入に頼っているザンビアらしい現象だ。

養殖農家の収穫風景

 

カワンブワ茶園

農業分野ではお茶の生産加工もしており、農場と加工工場も視察した。70年代に生産が開始され、当初はスリランカの技術者が協力し、その後ジンバブエの企業が買収したが、2011年に事業はストップ、現在は管財人と従業員が細々と経営しているが、赤字がたまり、灌漑設備も老朽化し、どう見ても買い手がつきそうな農園ではなかった。世界的に見てコーヒーは生産不足と聞くが、紅茶は需要が伸びないようで、よほど品質の高いものを作らない限り売るのは難しいだろう。

 

観光業はどうか。湖は大きく、対岸が見通せない。水もきれいで全体としての景観も悪くない。現在、いくつかのリゾートロッジの建設が急ピッチで進められており、ウォータースポーツやキャンプを楽しめるように開発すれば、観光客を呼び込めそうだ。ネックは交通手段だが、需要があれば飛行機の増便は可能であろう。

バングウェウル湖畔にて

 

このルアプラ州ではJICAが至るところで井戸を掘り、地域住民に安全な水を供給しており、日本に対して深い感謝の念が伝えられた。実際、車で走ると頻繁に井戸を見かけた。このほか、住民の農業支援で、灌漑設備をJICAが行っている。簡単で農民たちが自分で作って維持管理できる簡易堰、専門家がコンクリートで固めた規模の大きい恒久堰の2種類あるが、視察先の農民たちは皆、灌漑設備のおかげで乾期に野菜などを栽培でき、現金収入が増えたと喜んでいた。また、一部の農家は10メートル四方ほどの池を掘ってティラピアを養殖していたが、まだまだ大きな収入にはならないようだった。

 

JICA地下水開発計画

JICA灌漑開発

 

ルアプラ州は地図で見ると、コンゴ(民)にくさびを打ち込まれたように、コンゴ(民)領に抱き込まれているように見える。実際、コンゴ(民)との間ではモノやヒトの行き来は盛んで、同じ経済圏に入っているようである。この、手つかずの自然が残るルアプラ州にODA以外で日本から開発支援、投資が入ってくるかというと、現状では難しい。しかし、魚の養殖技術を日本から持ってきたりして、加工工場で缶詰にしたり、冷凍にしたりして出荷すれば、市場はコンゴ(民)に大きく広がっている。魚は安価なタンパク源であり、ザンビア人の栄養状態の改善にも資するのである。今後も、あきらめずに可能性を追求していきたいと思う。いつか、湖畔のリゾートロッジでティラピアの唐揚げを食べながらビールが飲める日が来ることを待っている。

 

 

 

平成26年12月22日
駐ザンビア特命全権大使 小井沼紀芳