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ザンビア便り第26回 「ザンビアのブランド牛、ザンビーフ」

 

皆さんは「ザンビーフ」というブランド牛をご存じですか。


私は1年前にザンビアに赴任してきましたが、最初の頃街のレストランでステーキを食べ、おいしかったことをよく覚えています。それが「ザンビーフ」だったのです。
最近、ザンビーフを訪問する機会があり、非常に興味深かったので、今回はこの農業ビジネスをご紹介します。

 

ルサカから車で北に向かって1時間走るとザンビーフのチサンバ農場に着きました。近くまで来ると広大な敷地が広がっています。まずは、CEOのフランシス・グローガン氏よりビジネス全体について説明を受けました。彼は、ザンビーフはザンビアのアグリビジネスをリードする企業と自負しており、アフリカでも急速に成長している南部アフリカ地域を市場にして企業活動を展開している、ザンビアの土地の6割は農業に適しており、また、水資源にも恵まれているため農業は非常に可能性を秘めたセクターである、また、農業ビジネスは地方の雇用創出にも大きく貢献している旨述べていました。


 

ザンビーフというと牛肉だけというイメージがありますが、実際は牛肉の他、鶏肉、豚肉、乳製品、穀物栽培と加工といった多角的なビジネスを行っています。広い敷地には約500ヘクタールの農地が広がり、メイズや、小麦、大豆の生産、製粉、肉牛や、鳥の肉加工場があります。ザンビア全体では8000ヘクタールの農地で耕作し、従業員は5000人を超えるそうです。さらにはナイジェリアとガーナにもビジネスを広げています。

 

CEOの説明の後、敷地内の食肉加工場、牛乳加工場を視察しましたが、従業員の衛生管理もしっかりとされており、また、特に鳥の加工場では機械化され、羽をむしり、内臓をきれいに取り除くなどの工程もほとんど機械化されて一日に12000羽が処理され、次々と大量の鶏肉が生産されていました。牛肉もそうですが、すべて冷凍処理され、袋詰めされ出荷されます。ここで処理される肉牛や、鳥はザンビーフで飼育されたものではなく、契約農家から持ち込まれたものだそうです。

 

また、牛乳など乳製品も、原料の生のミルクはこれも契約農家から集められ、ザンビーフの工場で殺菌され、製品化されています。

 

また、広大なメイズ耕作地も視察しましたが、畑はほとんど灌漑設備があり、水は近くの川から貯水池にためられ、くるくる回るスプリンクラー方式です。

 

 ザンビアは独立以来50年間、一言で言えば銅の輸出で経済が成り立っていたといっても過言ではありません。しかし、銅の国際価格は世界経済状況に依存するため、ザンビア経済は大きな浮き沈みを経験してきました。現在政府は、銅の輸出に依存した経済構造からの脱却、産業の多角化に取り組んでいます。農業分野はその中でも政府が重視しているものです。最後に挨拶しにCEOのところにうかがったとき、私からザンビーフの成功の秘訣は何だったかと質問しました。すると、彼は、政府の成長戦略に乗れたこと、それと、従業員たちのハードワークだといっていました。なるほどと思いました。さらに、最後に、私から、日本には和牛というブランドがあるが、興味はないかと質問しました。彼は、笑いながら、アフリカの市場は高級牛肉が売れるまでにはなっていないと答えました。確かに、ザンビーフはザンビアのスーパーで、1キロあたり100クワチャほどで売っていますが、日本の高級ブランド和牛はきっとその10倍はするでしょう。さらに、1キロ100クワチャの牛肉を買えるザンビア人もごく一握りの人たちであり、大多数のザンビア人の口には入りません。

 

 

しかし、ザンビアがこれから農業分野で生産性を上げ、経済を発展させてくれば、いつか和牛がルサカのスーパーに並ぶ日が来るかもしれません。そのためにも、日本企業がザンビアの農業に投資し、進出してくれることを願い、ザンビーフを後にしました。

 

平成26年12月22日
駐ザンビア特命全権大使 小井沼紀芳