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ザンビア便り第18回 「世界観光機関(UNWTO)総会の開催」
世界観光機関(UNWTO)の第20回総会が,8月24~29日,リビングストン市で開催されました。正確には,お隣のジンバブエとザンビアとが共同ホスト国で,会議はザンビアのリビングストン市とジンバブエのビクトリア・フォールズ市との両市で開催されました。この両市は,ビクトリアの滝を挟んで隣同士の位置にあります。開会式はビクトリア・フォールズ市で行われ,途中までジンバブエ側で会議を行い,会議の後半と閉会式はザンビア側のリビングストン市で行われました。両国(市)間の行き来には通常は出入国手続きが必要ですが,会議期間中,会議参加者は両国(市)間を自由に行き来できるという特別な措置がとられました。
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世界観光機関は,156カ国が加盟する国連の専門機関で,総会は1年おきに世界各地で開催されます。日本は1978年に加盟し,世界観光機関唯一の地域事務所である世界観光機関アジア太平洋センターが奈良に置かれています。
今回の総会は,アフリカで2度目(2005年の第16回総会はセネガルの首都ダカールで開催),南部アフリカでは初めての開催となりました。120カ国から49名の閣僚を含む700名の代表団が参加し,メディアや民間企業からも900名ほどが参加したそうで,その他諸々の関係者も合わせると総勢数千名がリビングストン市(とビクトリアフォールズ市)に集まったと思われます。ザンビアはかつて非同盟諸国会議などをホストしたことはありますが,これだけ大規模な,世界中の国が集まるイベントをホストするのは初めてのことではないかと思います。日本からは鶴保国土交通副大臣ほかが参加しました。私もザンビア側での会議の一部に出席しました。
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閉会式の会場(ロイヤル・リビングストン・ホテル) 閉会式は世界各国から参加者が集う
2011年10月,韓国の慶州で開催された前回の総会で,第20回総会をザンビアとジンバブエで開催すると決定されて以来,ザンビア政府は,ホスト国として会議を成功させるため,政府を挙げて色々な準備を進めてきました。リビングストン空港新ターミナルの建設,道路の整備などのインフラ整備から,土産物屋の建物整備,観光ガイドの育成まで,必要なあらゆる準備を営々と進めてきました。担当大臣として準備の陣頭に立ってきた観光・芸術大臣は,今年の初めからオフィスを事実上リビングストンに移してますます精力的に指揮に当たりました。この半年くらいは,準備に奔走する彼女の様子がメディアに出ない日はないというくらいの活躍ぶりでした。
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新築されたリビングストン空港新ターミナル きれいに舗装されたリビングストン市内目抜き道路
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改装されて清潔感のある土産物屋
この会議の成功に懸けるザンビア政府の意気込みと期待の大きさは,ちょっと大げさに例えれば,1964年の東京オリンピック開催に向けての日本のそれと似ているかもしれません。ザンビアにとって,今回の会議のホスト国となるのは,国際社会での檜舞台に立つようなもので,何としても成功させなければならないという強い意気込みが感じられました。1964年に独立以来50年近くを経たザンビアの成長した姿を,世界相手の晴れ舞台で内外に誇示したいということだと思います。ザンビアのサタ大統領が開会式と閉会式に出席したのは,ザンビアにとってのそうした意義からしても当然だったと思います。会議の少し前からは,まるでザンビア政府全体がルサカからリビングストンに移動してしまったかのごとくで,多数の閣僚や政府幹部が現地入りしてしまい,ルサカでの我々の仕事の相手がいなくなって物事が進まないという事態になったのには少々困りました。
会議のロジスティクスと運営には大きなトラブルもなく,無事にホスト国としての務めを果たしたと言えそうです。閉会式で観光・芸術大臣と立ち話をする機会がありましたが,無事に大役をこなしたという安堵と満足感からか,満面の笑みで,この後は少し休息したいと冗談交じりに言っていました。国家の威信をかけて臨んだザンビア政府に,成功おめでとうと申し上げたいと思います。観光・芸術大臣,お疲れさまでした。余談ですが,同大臣は,昨年,サタ大統領の訪日に同行されたほか,私的なものも含めて何度か日本を訪問されている親日家です。日本大使館と国際交流基金の共催で毎年開催している日本映画祭のオープニングに,昨年は来賓としてお越しいただき,当日上映された「3丁目の夕日」にいたく感動された様子でした。
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観光芸術大臣(左)と筆者
ザンビアは,国の経済開発において,観光産業を柱の一つと位置付けています。ここ2年来,世界からの観光客を呼び込もうと,ザンビア・レッツ・エクスプロア(Zambia - Let’s Explore)という観光キャンペーンも展開しています。
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ザンビアの観光パンフレット
観光スポットの筆頭は,世界遺産でもあるビクトリアの滝でしょう。ビクトリアの滝を擁するリビングストン市は,従来,南部州(ザンビアには地方行政区画として10の州があります)の州都でしたが,政府は,2012年に,州都を別の市に移し,リビングストンについてはザンビアの「観光首都」と位置づけて一層の発展を図っていくこととなりました。ビクトリアの滝以外にも,野生動物が見られる国立公園や保護区もザンビア観光の目玉です。ちなみに国立公園や保護区は,ザンビア国土の約30%も占め,広大な土地に多種多様な動物が生息しており魅力的です。自然景観も,例えば,ザンビアの北部・北東部は,水が豊富で数多くの滝があり,琵琶湖の5倍近い面積のあるタンガニーカ湖など大きな湖水にも恵まれています。また,伝統的な部族の祭りなども,日本と同じように各地で様々なものがあり,興味深いと思われます。
しかし,こうしたザンビアの観光資源は,外国からの観光客を受け入れるには,一部を除いて,総じてまだ開発の余地が大きく,交通の便,宿泊施設やサービスなどの面で一層の整備が期待されます。サービスの面では,ザンビア人の親切で穏やかな国民性が,観光客へのもてなし振りにもっと活かされれば,大きな可能性を秘めるザンビア観光の魅力が一層引き出されることでしょう。今回の世界観光機関総会を契機に,ザンビアの観光産業が新たな飛躍を遂げることを期待したいと思います。
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8月のビクトリアの滝 乾季なので滝の水煙もわずか
(雨季(12~4月)は底が見えない程の水量)
平成25年9月20日
駐ザンビア特命全権大使 江川明夫
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