ザンビア便り 第13回 「ザンビアと水」その2

 

 ルサカは連日30度を超す暑さが続いています。街のあちこちで火炎樹(かえんじゅ)(鳳凰木(ほうおうぼく))の花が咲き乱れています。

ルサカ市内の火炎樹

 さて、今回のザンビア便りは、前回に続きザンビアにおける「水」についてご紹介します。

 

<農業・漁業と「水」>
 ザンビアでは国民の6割以上が農業に従事しており(日本では約2%)、農業は国民経済においてたいへん重要な位置を占めています。しかし、生産性は低く、その向上が課題となっています。生産性が低い理由の一つは、多くの農家が天水に頼っており灌漑が発達していないことです。ザンビア政府は、「国家灌漑計画」を作って灌漑の普及に努めています。
 日本は農業振興をザンビアに対するODAの重要分野としており、稲作の振興や農業普及員の育成など多様な協力を行っていますが、灌漑の促進についても協力しています。ザンビアの農家の実に96%が小規模・零細農家で、こうした農家に灌漑を普及することが安定した農業生産の確保の観点から重要です。日本は、小規模・零細農家を対象とした小規模灌漑の普及に協力しており、木、草など農民が手近にある材料を使って簡便に灌漑施設を作れるような技術の移転を行っています。モデル地区のルアプラ州では小規模・零細農家自身の手により500ヘクタール以上の灌漑農地が生み出され、新たにいろいろな種類の野菜栽培が行われたり、灌漑水を利用したため池において小規模な養魚なども行われるなど、協力の成果が徐々に現れてきています。

 

日本のODAによる技術移転:農民手造りの灌漑用簡易堰

 ザンビアは内陸国ですが、ザンビアの人々は魚をよく食べます。ちょっと意外ですが、ザンビア人の動物性タンパク質摂取量の40%は魚によるそうです。最も一般的に食されているのは、カペンタと呼ばれる小魚です。したがって、漁業も盛んです。海はないので、河川と湖沼の魚類を対象とする淡水漁業です。ザンビアでは9つの主要な漁場があります。ザンベジ川やタンガニーカ湖、カリバ湖、バングエウル湖などです。ザンビア政府の農業畜産省には、ちゃんと漁業を担当する部局があります(以前は「畜産水産省」が独立していたときもありました)。ザンビアの年間漁獲量は約7万から8.5万トンですが、魚の消費量は年間12万トンとも言われています。不足分は南アフリカ、ジンバブエなどからの輸入に頼っています。このため、魚の養殖も近年ではさかんに行われており、養殖によるものが漁獲量の約10%を占めています。しかしながら、養殖は、資金面などの問題からまだ発達が不十分で、ザンビア政府は「国家養殖戦略」を策定して養殖の振興に努めています。

 

市場で売られているカペンタ

 

<発電と「水」>
 ザンビアの豊富な水源は、水力発電に活用されています。ザンビアの発電量のほぼ全量が水力発電によっています。ザンビアにはアフリカ第4の河川であるザンベジ川をはじめカフエ川、ルアプラ川、ルアングワ川など多数の大河川があり、ダムも多く造られていて水力発電が行われています。ビクトリアの滝はザンベジ川中流にありますが、滝のすぐ下流には、水力発電所があります。また、ザンベジ川のさらに下流には、貯水量では世界最大の人造湖と言われるカリバ湖とカリバ・ダムがあり、水力発電が行われています。カリバ湖の面積は日本の琵琶湖の8倍ほどもあります。カリバ・ダムの発電能力はザンビア全体の3割にも及びます。さらに、ビクトリアの滝の下流と、カフエ川の水力発電所の発電能力を合わせると、この3発電所でザンビア全体の電力の約98%をカバーしています。

 

カリバ・ダム

カリバ湖

 日本でも最近は電力需要と供給の問題に大きな関心が集まっていますが、ザンビアでは経済の成長に連れて需給が厳しくなっています。電力需要の5割を占める鉱業の生産が将来大幅に伸びることになると、供給が追い付かなくなるという可能性も指摘されています。現状では水力発電は開発可能な水源の3割くらいしか開発されておらず、電源開発が重要な課題となっています。また、鉱業の生産は、主に国の北部で行われていますが、大規模な水力発電所は南部に集中しているため、南部で発電された電力を北部の鉱業施設に送配電する施設の充実も課題となっています。
 ザンビアでは電気のない生活を強いられている人がまだ沢山います。こうした人々の割合は、都市部では人口の半分位、地方では96%に達するというデータがあります。このような人たちは、家の明かりに灯油やろうそくを用い、料理の煮炊きには木炭を使うなど、決して良いとは言えない生活環境の中で暮らしています。電気の利用でより多くの国民がより快適な生活を享受できるようにすることが急務となっています。
 産業用にも生活用にも十分に電力を供給していくため、ザンビアでは新たな水力発電所を造ったり、既存の発電所の能力を増強する努力が続けられています。また、それだけでなく、送配電施設の整備も進められています。ルサカでもときどき停電がありますが、これは発電能力の不足というよりは、送配電システムの問題が主な原因と聞きます。  日本は電力をザンビアに対するODAの重要分野と位置づけて、協力をしています。これまでに電力に関する全国的総合計画と地方電化のための総合計画の策定に協力したほか、現在は、これらの総合計画に基づいて地方電化のための実際の協力事業が始まろうとしているところです。この事業では、ザンビアの6つの州における配電網の整備と一つの小規模水力発電所の建設を行います。こうしたハード面だけでなく、地方の電化を進める任務を担っている地方電化庁の能力強化にも技術協力を行っています。

 

 

 

平成24年11月1日

駐ザンビア特命全権大使 江川明夫