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ザンビア便り第7回 ザンビアの大統領選挙(その3)

 

 9月20日にザンビアの大統領選挙が行われました。諸外国や国際機関が選挙監視を行いましたが、日本も大使館員が選挙監視活動を行いました。今回は、選挙戦の様子や選挙監視活動を通じて見たザンビアの選挙の実際の模様などをご紹介します。
 選挙戦中は、街のあちこちに各候補のポスターが貼られたり、目抜き交差点に各候補の横断幕が掲げられたり、各候補による公開討論会が行われたり、かなり賑やかでした。各候補の地方遊説も活発でした。与党のバンダ候補は現職の強みを活かして、高度経済成長の達成などの実績や、道路、学校、病院の建設といった開発の成果を各地で誇示することに意を用いていたように思います。サタ候補は、”Don’t Kubeba”というスローガンを掲げ、このポスターが街中や車に貼られました。Don’tは英語ですが、Kubebaはサタ候補出身部族のベンバ語で「言う」という意味で、直訳すれば「言うな」になります。その意味するところは、バンダ候補側のMMDがTシャツなどの物品を集会などでたくさん配布していることから、もらえるものは黙って頂戴して、投票はそっとサタ候補とPFへ、ということだそうです。「そっと、内緒に」とも訳せるでしょうか。
 マスコミの報道も選挙一色でした。ザンビアで特徴的なことは、主要なマスコミが政党支持を鮮明にしていることです。従来から、政府は全国紙2紙と全国ネットのテレビ局を所有しており、別の全国紙1紙は一貫して野党PFを支持してきました。
さて、選挙監視を行うためには、選挙管理委員会に登録を行わなければなりません。事前にザンビア外務省への手続きを経た上で、登録所に赴きました。身分証明書で身分を確認の上、顔写真の撮影が済むと、すぐに顔写真付きの選挙監視員証を発行してくれます。同時に、特製の鞄に入った選挙関係の資料一式を手渡されます。中には、候補者リスト、投票所リスト、選挙関係法令、地図などが入っています。この一連の登録事務処理はとても効率的に行われていました。

<選挙監視員に配布された資料等>

 選挙監視は選挙当日だけでなく、事前にもできますし、全国どこの地域でも行うことができます。EU、英連邦事務局、アメリカなどからは、今回大規模な選挙監視団が派遣され、全国にわたって事前から監視活動を行っていました。日本は、私を入れて大使館員5名だけでの体制でもあり、選挙当日、ルサカ市内においていくつかの投票所を視察する形で監視活動を行いました。
 今回の選挙では、全国の投票所総数は6,456か所でした。学校などが投票所に充てられるのは日本と同様ですが、変わったところでは、ルサカ市内のゴルフ場のクラブハウスが投票所になったケースもありました。有権者が投票所に来ると、まず、本人確認が行われます。本人確認は、投票者が持参する国民登録カードと有権者登録カードとを、有権者登録簿と照合することにより行われます。ザンビアには国民登録制度があり、顔写真付きの登録カードが発給されています。有権者登録カードも顔写真付きですし、有権者登録簿も顔写真付きです。本人確認に当たって、係官が、その有権者の名前、国民登録番号、有権者登録番号を大きな声で読み上げます。これは、各投票所に派遣されている各政党の選挙モニター担当者が同様に手元の有権者登録簿写しによって本人確認を行えるようにするためです。本人確認は、このようにかなり厳格に行われていました。
 本人確認が済むと、投票者は次の係官のところへ進みます。ここでは、係官が、投票者の親指にマーカーで印を付けた後、投票用紙を手交します。マーカーで印を付けるのは、不正に2回以上投票するのを防止するためです。次に、投票者は投票用紙記載台のところへ行って、投票用紙に記載されている候補者リストの中から1名について指定の欄にX印を書きます。最後に、投票箱のところへ行って、票を投じます。このような投票の流れですが、今回監視した投票所では、いずれもきちんと整然と投票が行われていました。
 大統領選挙の投票用紙は、横10cm、縦30cmくらいの大きな縦長の用紙です。候補者の名前だけでなく、顔写真、政党名、政党のシンボルマークが印刷されています。顔写真やシンボルマークまで入っているのは、おそらく、読み書きのできないような人でも、ちゃんと判断して投票できるようにするという目的もあるのでないかと思われます。伝統的に、MMDは時計を、PFはボートを漕いでいる様子をそれぞれシンボルマークとしています。

     

 <PFのシンボル>      <MMDのシンボル>

 今回の選挙のための投票用紙は、南アで印刷されました。当初、印刷を政府印刷所で行うことが検討されましたが、設備等が不十分で印刷は困難ということになり、入札が行われ、南アの印刷会社に落札したものです。投票用紙の印刷段階で不正が行われたりしないかを監視するため、わざわざ各政党等から現地に人員が派遣されたというニュースにはちょっと驚きました。
 開票は、各投票所で行った結果が全国150の選挙区ごとの集計所に集められ、さらに首都ルサカの集計センターに伝達されます。この集計センターはルサカの国際会議施設に設けられました。ここにマスメディア、各政党、NGOなど民間諸団体、外交団などが集まって待機し、選挙管理委員会によって随時行われる各地の開票中間結果発表などに耳を澄ませました。最終結果の発表までにはかなり時間がかかりました。ザンビアではまだ情報通信網が十分整備されていないので全国からの集計に時間がかかるというやむを得ない面もあったでしょうし、開票に慎重の上にも慎重を期したということもあったかもしれません。発表が遅いことに苛立った一部市民が騒ぐという事態も生じました。
 23日午前零時を回って選挙管理委員会からサタ候補の大統領当選が発表されるや、集計センター内ではどよめきが起きました。ルサカ市内ではあちこちで支持者が街頭に繰り出し、車のクラクションを鳴らしたり、花火を打ち上げたりの大騒ぎが明け方近くまで続けられました。
 今回の選挙監視を行った監視団からはそれぞれ報告などが出されましたが、選挙は概ね公正に自由に民主的に行われたとの評価が出されています。

 

平成23年10月20日

駐ザンビア特命全権大使 江川明夫